ガラスと無機物との化学反応の解明

鉛を含む工業製品は数多くあります。特にガラスに含まれることが多いため,ガラスと無機物の反応を理解することができれば,工業製品の鉛フリー化に貢献できます。本研究室では,モデルケースとして,日本の伝統工芸の代表である陶磁器を取り上げ,特にその赤色着色に着目し,ガラスと酸化鉄微粒子の反応について詳細に解析しています。陶磁器の着色に用いる上絵用のガラスは,約800℃で焼き付けることを前提として設計されています。そのような高温では安定な無機化合物である酸化鉄赤色顔料(α-Fe2O3)もガラスと反応して分解します。所望の赤色を得るためには,酸化鉄微粒子の分散と焼成時における反応を制御する必要がありますが,反応性はガラスの物性や組成によって変化するため,非常に複雑です。私たちはガラスと酸化鉄の高温時における反応の本質を多角的な分析手法を用いて明らかにすることを目指しています。上の図は上絵用の無鉛ガラスと酸化鉄赤色顔料の焼成時における反応を模式的に示した図です。